もみの木(ドイツ民謡)

唱歌・童謡

お待ちしておりました!

もーみーのきー もーみーのきー♪

クリスマスになると頻繁に歌われる童謡「もみの木」。これもまた子どもの頃のクリスマス会を思い出します。

まずは、私がオルガン伴奏で歌ったものをお聴きいただきたいと思います。

16世紀のドイツ民謡とされ、日本語の歌詞は色々存在しています。動画では、誰が作詞したのかわからないもので歌ってみました。聴き馴染みがないと感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。

では早速、「もみの木」について掘り下げていきましょう!

実はクリスマスの歌ではなく恋の歌!?

「もみの木」の歌詞をまじまじ見ていて気づいたのは、これはクリスマスの歌ではないんじゃ!?もしかして恋の歌では!?ということです。

さて真相はどうなのでしょうか。

まずはドイツ語の歌詞である「O Tannenbaum」から見ていこうと思います。

ドイツ語の歌詞

19世紀、1番はJ.A.ツァルナック、2番と3番はE.G.アンシュッツが作詞しました。本当の原詞ではありませんが、クリスマスソングとしては原詞と呼んで良いと思います。
 
O Tannenbaum, o Tannenbaum,
Wie treu sind deine Blätter!
Du grünst nicht nur zur Sommerzeit,
Nein auch im Winter wenn es schneit.
O Tannenbaum, o Tannenbaum,
Wie treu sind deine Blätter!
 
O Tannenbaum, o Tannenbaum,
Du kannst mir sehr gefallen!
Wie oft hat schon zur Winterszeit
Ein Baum von dir mich hoch erfreut!
O Tannenbaum, o Tannenbaum,
Du kannst mir sehr gefallen!
 
O Tannenbaum, o Tannenbaum,
Dein Kleid will mich was lehren:
Die Hoffnung und Beständigkeit
Gibt Mut und Kraft zu jeder Zeit!
O Tannenbaum, o Tannenbaum,
Dein Kleid will mich was lehren!

【日本語訳(訳:弥生歌月)】

おお もみの木、おお もみの木
君の葉はなんて誠実なのだろう!
夏の日だけでなく、
雪の降る冬にも緑のままだ。
おお もみの木、おお もみの木
君の葉は本当に誠実だ!
 
おお もみの木、おお もみの木
君のことがとても気に入ったよ!
冬の日に何度も何度も
一本の木がどんなに私を喜ばせてくれたことか!
おお もみの木、おお もみの木
君は本当に素敵だ!
 
おお もみの木、おお もみの木
君のその装いは私に教えてくれる、
希望と変わらぬ心が
いつでも勇気と強さをくれることを!
おお もみの木、おお もみの木
君のその装いはそう教えてくれるのだ!

 

【私の解釈】

この詞では、夏の日も冬の日も変わらない もみの木に対する想いを歌っています。Tannenbaum はクリスマスツリーと訳せますが、もみの木を指します。この歌は一応クリスマスソングですが、クリスマスに限らないという見方もできます。

そしてもっと深い解釈がありまして…。

実はこれ、恋の歌とも捉えられるのですよね。もみの木を恋人に置き換えてみると、なんだかグッとくるものを感じます。常緑樹というのは不変の心の象徴でもあります。”君の装い” という点も、彼女の内面のみならず、外見にも惚れ込んでいる気がしますね。

いや、分かりませんよ!人間への恋じゃなくて、本当に もみの木への愛かもしれません。自然への敬愛であっても、なにもおかしくありません。

ちなみに、1番は J.A.ツァルナックが作詞したと先述しましたが、彼が書いた2〜4番は不実な恋人を描いていました。E.G.アンシュッツがそれを無くして別の歌詞(先述の歌詞の2,3番)を付け、れっきとしたクリスマスソングとなったのです。下記リンク先には、不実な恋人を描いた歌詞が載っているので、熱意がある方は是非訳してみてください!

不実な恋人を描いた1〜4番の歌詞(日本語訳なし)を見る

英語の歌詞

世界中では英語の歌詞で歌われることが多いですね。ドイツ語の歌詞ではクリスマスという具体的な単語は出てきませんが、英語の歌詞のタイトルは「O Christmas Tree」です。もみの木は英語で fir tree といいますが、わざわざ christmas tree となっており、クリスマスの歌と見ることができます。

英語の歌詞については、原詞ほどの重要性はないので、下記サイトをご参照ください。

英語の歌詞(日本語訳付き)を見る

日本語の歌詞の色々

日本語の歌詞は、実は複数あります。あなたはどれをご存じですか?また、どれが好きですか?

中山知子作詞

まずは童謡詩人の中山知子さんが書いた「もみの木」です。日本では最も有名かもしれません。 
もみの木 もみの木
いつも緑よ
もみの木 もみの木
いつも緑よ
輝く夏の日
雪降る冬の日
もみの木 もみの木
いつも緑よ
 
もみの木 もみの木
こずえ静かに
もみの木 もみの木
こずえ静かに
喜び悲しみ
やさしく見守る
もみの木 もみの木
こずえ静かに
 
もみの木 もみの木
繁れ豊かに
もみの木 もみの木
繁れ豊かに
雨にもくじけず
風にも折られず
もみの木 もみの木
繁れ豊かに

この歌詞から恋の色はこれっぽっちも見えません。たくましい自然の歌ですね。歌詞にある表現は、宮沢賢治の “雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ…” を思わせます。また、クリスマス要素はどこにもありませんね。

ちなみに、”もみのき” と、英語の “O Christmas Tree” は、母音がほぼ一致しています。”もみのき” は mominoki なので母音は oioi 。”O Christmas Tree” は母音が oiai となります。このシンクロは美しい!

早川義郎作詞

早川義郎さんの書いた「樅の木」。歌詞はだいぶ独特です。

おおタンネンバウム おおタンネンバウム
ときわのみどり
おおタンネンバウム おおタンネンバウム
ときわのみどり
夏の山路には
枝をさしのべて
清がしき木陰に
われをいざなう
 

北風の冬も 変わらぬみどり
北風の冬も 変わらぬみどり
けがれなき雪の
白き装いに
いや清き姿
おおタンネンバウム
おおタンネンバウム

 
“もみの木” と訳さずに “タンネンバウム” と訳されているのが大きな特徴です。1番は夏、2番は冬。格調高く描いている歌詞だなあと思います。けっこう好きかも。
 

野口耽介作詞

これは日本語歌詞の中で最も古いものかもしれません。お年を召された方だとご存じでしょうか。

もみのき もみのき
ときわにあおき
もみのき もみのき
ときわにあおき
くさもえるなつも
ゆきしろきふゆも
もみのき もみのき
ときわにあおき

さっきもありましたが、 “ときわ” という言葉はなかなか難しいですね。漢字を使うと “常” となりましょう。

並木祐一作詞

こんな歌詞もあります。

樅の木 樅の木
生いや茂れる
木蔭をさまよい
語りし思い出
樅の木 樅の木
いなまお恋し
 
乙女よ 乙女よ
汝はいずこよ
木蔭をさまよい
誓いし幸の日
乙女よ 乙女よ
いずこに行きし

これは恋の歌ですね! やっぱり私のように恋の歌にしたくなる人はいるもんですなあ。あと、関係ないですが、”生いや茂れる” のところで、島崎藤村の詩「椰子の實」にある “舊(もと)の木は生ひや茂れる” を思い出しました。

龍田和夫作詞

まだあります!これは、J.A.ツァルナックが書いた1〜4番の歌詞の訳詞となっています。つまり不実な恋人を描いています。

樅の木 樅の木
永遠に緑よ
樅の木 樅の木
永遠に緑よ
夏にも冬にも
雪の日も緑
樅の木 樅の木
永遠に緑よ
 
乙女よ 乙女よ
つれなき乙女
乙女よ 乙女よ
つれなき乙女
落ちぶれし我に
誓いを破りぬ
乙女よ 乙女よ
つれなき乙女
 
鶯 鶯
そは君のごと
鶯 鶯
そは君のごと
夏には微笑
秋には去り行く
鶯 鶯
そは君のごと
 
谷間の流れは
不実のかがみ
谷間の流れは
不実のかがみ
雨には流れて
日照りは流れず
谷間の流れは
不実のかがみ

読んでいて腹立たしい気持ちになります。私が女性と付き合ったら、エバーグリーンな関係でありたいですね。

作詞者不詳

最後にご紹介するのは、今回動画で歌ったものです。作詞者は誰なのか、いまだにわかりません。

もみの木 もみの木
変わらぬその葉
もみの木 もみの木
変わらぬその葉
夏にも冬にも
必ず繁るよ
もみの木 もみの木
変わらぬその葉
 

もみの木 もみの木
美し姿
もみの木 もみの木
美し姿
クリスマスごとに
美しく飾る
もみの木 もみの木
美し姿

2番に “クリスマス” という単語が出てきます。ここまでいくつかの歌詞をご紹介しましたが、ようやく!って感じですね。最もクリスマスらしさがあるなあと思いますし、2番で美の字が多用されているのも、なんかキラキラしていて好きです。

ほか

ほかにも作詞や訳詞、さらには替え歌までしている人がいます。もう少し載せたいところですが、長くなってきたのでやめておきます。

もみの木ってどんな木?

歌詞だけ紹介してきて、もみの木がどんな木なのか、説明をまだしていなかったですね。

常緑針葉樹、モミとヨーロッパモミ

もみの木(モミ、樅)は、マツ科モミ属の常緑針葉。マツもそうですね。チクチクした葉っぱで、紅葉もしません。日本にも自生していますが、日本のはモミ、ヨーロッパのもみの木はヨーロッパモミといい、品種も異なるようです。

生命力や永遠の命の象徴

日本のモミもヨーロッパモミも、生命力の象徴だといわれています。常緑樹がそうだからです。

またかつて、ゲルマン民族が もみの木を冬至に神様へ捧げたそうです。一方キリスト教では永遠の命の象徴でした。のちにその風習とキリスト教が融合し、クリスマスツリーとして飾られるようになったといわれています。

 “も、みの木” って歌ってない?

さてここからは声楽的なお話です。日本語で “もーみーのきー もーみーのきー” と歌う場合を取り上げましょう。

前提として、歌詞に問題あり!

訳詞というものは大変難しいことを承知の上で申すと、”もーみのきー” という歌い出しの歌詞には問題があると考えています。

“もみの木” の発音は、標準語では “も”にアクセントがきます。実際発音してみると一番高くなりますよね。にもかかわらず、メロディーの音は一番低い。つまり、日本語の抑揚とメロディーの抑揚が合っていないのです。

さらに、”も” は、アウフタクトといって、前の小節の最後の拍にきています。そして “み” で1拍目。1拍目は強拍なので、どうしても強くなってしまうのです。しかも “も” で少し弾みをつけて “み” に突っ込んでしまう。本能的にそうしたくなってしまいます。

ドイツ語や英語の歌詞は、言葉のアクセントとメロディーのアクセントがきちんと一致しています。

も、みの木も、みの木!?

発音に無頓着に歌うと、

 もぉ みーのきー

となってしまいます。

これだと日本語として不自然です。”も、みの木” という歌詞に聞こえてしまいます。2回続けると、

 も、みの木も、みの木

と聞こえてしまいます。みの木って何ですか?みのもんたの木?……いえ、冗談です!

歌い方を工夫しよう!

歌詞に問題があるので限界はありますが、歌い手としてはなるべく自然に聞こえるように努めるべきでしょう。歌い出し部分は次のようになります。

 もーみーのきー、ーみーのきー

“も” と “み” の間はしっかりつなげ、逆に “き” と “も ” の間は少しあけるとより自然になります。ことばは “も” から始まる!という意識を持つことが大切です。

……あたりまえじゃん!って思った方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも、この当たり前をこなすのって、けっこう理性が必要です。つい音楽に身を委ねすぎると、歌詞への意識が弱まり、自分だけが気持ちのいい歌い方をしてしまいがちです。私もそうなりがちなので、常に気を付けていきたいものです。

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