あけましておめでとうございます!
2025年の初記事です。とっくに1月1日は過ぎていますが、やはり唱歌「一月一日(いちげついちじつ/いちがついちじつ)」を取り上げないわけにはいきません。
では早速、私の歌唱にてお聴きくださいませ。
厳か かつ 雅やかな唱歌ですね。
実は、街中やテレビの正月でも、耳を澄ましているとこのメロディーが聞こえてきますし、年末の紅白歌合戦のエンディングあたりでもワンフレーズ耳にしたことがあります。しかしそれを「一月一日」と知る人はそう多くはないでしょう。
では、掘り下げていきましょう!
歌詞、そして改変
「一月一日」は大きく3つほど作品が存在しますが、今回は、1893(明治26)年に『祝日大祭日歌詞竝樂譜』にて初出した、千家尊福作詞・上眞行作曲の儀式唱歌のことです。ご注意ください。
まずは歌詞と意訳を載せましょう。
歌詞と意訳
年のはじめの 例とて
終りなき世の めでたさを
松竹たて 門ごとに
いはふ今日こそ たのしけれ初日のひかり あきらけく(さし出でて)
治る御代の(四方に輝く) 今朝の空
君がみかげに 比へつつ
仰ぎ見るこそ たふとけれ
祝う今日こそ 楽しいものだ
仰ぎ見ることこそ 尊いものだ
1番では元日の風景を描いていますが、2番では明治天皇を称えるような内容となっています。
歌詞の改変
明治天皇(睦仁親王)を称えるということは、明治時代にしか実用性のない歌だといえます。大正時代になると、先述の括弧内の歌詞に置き替えられました。改めて改変前と後を以下に記します。
- 明らけく → さし出でて
- 治る御代の → 四方に輝く
別に変更前の字面だけ見ると大正時代にも使えなくはなさそうですが、上記を縦読みしてみてください。”明治” と読めますよね?…そう、だから改変を余儀なくされたわけです。
ちなみに、改変されたのは1913(大正2)年。発表から20年後です。そして現在に至るまで歌詞は変更されていません。なお、冒頭の私の動画では、原詞のまま歌っています。
出典の『祝日大祭日歌詞竝樂譜』とは
「一月一日」の初出は、官報にて告示された『祝日大祭日歌詞竝樂譜』です。読みは『しゅくじつたいさいじつかしならびにがくふ』。
分かりやすく書くと、〈祝日・大祭日のための歌詞と楽譜〉となります。もっと簡単にいうと祝祭日の歌というわけです。
全8曲
下記の8曲が収められています。
- 君が代
- 勅語奉答
- 一月一日
- 元始祭
- 紀元節
- 神甞祭
- 天長節
- 新甞祭
「君が代」「勅語奉答」は特にどの祝祭日というわけではなかったようですが、「一月一日」は元日、「原始祭」は1月3日、「紀元節」は神武天皇即位日の2月11日、「神嘗祭」は10月17日、「天長節」は天皇誕生日、「新嘗祭」は今では勤労感謝の日にあたる11月23日です。
小学校での儀式
当時の小学校では、小学校祝日大祭日儀式規程に基づいて祝祭日に儀式をとり行い、上記の唱歌を歌っていたそうです。国旗を掲揚したため、祝祭日のことを旗日(はたび)と呼んだりもします。
今では、祝日に儀式をとり行う小学校はほぼ皆無でしょう。むしろその日は休みで、子どもたちが大喜びする日といえます。大人の世界でも、祝日は心身の休養日になるため、大変ありがたいものです。……が、カレンダー関係なく働く人も多いことを忘れてはなりません。
なお当時は、1月1日にも、小学生は登校して儀式に参加したそうですね。戦後になると〈国民の祝日〉が法律に明文化され、元日は休日となり、今では受験生ですら1月1日はお休みのことがほとんどです。まあ、仕事の人はそうとも限りませんが。
元日と元旦のちがい
元日は1月1日のことです。これは疑いようがありません。
では、元旦は何でしょう?
X(旧Twitter)で色々なポストを見ていると、元日と元旦を混同している人が多いです。しかし両者は明確に異なります。
元旦は、元日の朝や午前を指します。”旦” の字は朝日が昇る様子を模ったものです。したがって、’元旦の朝’ は重複した表現になりますし、’元旦の昼’ は矛盾した表現となります。
ただ、ことばというものは時代と共に変わっていきます。今はまだ元日と元旦の意味は明確に区別されますが、このまま混同する人が増えていくと、元旦の意味が元日にどんどん近づいていくと思われます。
歌うときは古語の発音に注意
歌詞には古語が使われています。下記の発音には注意を払う必要があります。
“いはふ”
1番に出てくる “いはふ” は、漢字にすると “祝う” となりますが、発音は “いわう” ではなく “いおー” となります。アウはオーと発音するのです。
とはいえハ行からくる “おー” なので、脳裏には “ほほ” と歌う感覚を持っておく(あくまで感覚だけで実際の発音は “おー” とする)と、バラエティに富んだ日本語発音になります(余裕があればでOK)。
“あふぎ”
2番では、”仰ぎ見る” と出てきますが、この “あふぎ” も発音に注意です。これは一般的に “あおぎ” と発音します。
しかし、先ほどの理論どおりいけば、”おーぎ” とならないとおかしいですよね。アウはオーなのですから。
そのため “おーぎ” にしたいところです。現にそのような指導もありますし、昔は “おーぎ” と発音する人も多かったそうです。1934(昭和9)年には、放送用語並発音改善調査委員会にて “おーぎ” も認めています(参考:NHK『放送研究と調査』より「語形の検討」p.84)。
“たふとけれ”
そして最後の “たふとけれ” は、”とーとけれ” となります。素直に、アウの発音をオーとします。
ちなみに、直前の言葉 “あふぎみる” と合わせると、 〈仰げば尊し〉という言葉が浮かんできます。


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