お待ちしておりました!
保育園児のとき、先生やみんなと一緒に、近くの干からびた田に入って凧あげしました。当時は寛容で、そういう光景は割とよくあったように思います。今だと「他人の土地で遊ぶな!」と怒られるかもしれませんね。
さて今回は、唱歌「たこのうた」です。平仮名だけだと凧か蛸か分かりませんが、今回はもちろん前者。こんな歌です。
なんとも正月らしい平穏な情景ですね。こういう何気ない風景も、今となっては次第に過去のものとなっていっています。寂しいものです。
では、唱歌「たこのうた」について掘り下げていきましょう!
たこのうた?タコノウタ?それとも……
まず曲名ですが、今回「たこのうた」と書いていますけど、実は「タコノウタ」が初出なんです。
「タコノウタ」として
初出は、1910(明治43)年の『尋常小學讀本唱歌』。つまり文部省唱歌。「タコノウタ」は第3曲で、曲名だけでなく歌詞もほとんどカタカナで書かれていました。歌詞は下記です。
タコタコアガレ。
カゼヨクウケテ
クモマデアガレ。
天マデアガレ。エダコニジダコ
ドチラモマケズ
クモマデアガレ。
天マデアガレ。アレアレサガル。
ヒケヒケイトヲ。
アレアレアガル。
ハナスナイトヲ。
このように、”天” 以外はすべてカタカナです。今でも教科書では、簡単な漢字だけそのまま漢字で、あとは平仮名で書くことはよくあることですね。が、当時、 “天” は天皇や天地の天。印象的な漢字だったといえます。
「紙鳶の歌」として
上記の翌年の1911(明治44)年には『尋常小學唱歌』に「紙鳶の歌」として掲載。また、1932(昭和7)年にも『新訂尋常小学唱歌』に「紙鳶の歌」として掲載されました。紙の鳶(とび)という珍しい表記です。漢字マシマシの歌詞は以下です。
紙鳶紙鳶揚れ。
風よくうけて、
雲まで揚れ、
天まで揚れ。繪紙鳶に字紙鳶、
どちらも負けず、
雲まで揚れ、
天まで揚れ。あれあれ、下る。
ひけひけ、絲を。
あれあれ、揚る。
放すな、絲を。
漢字を使うと別の歌のように感じます。イメージがガラッと変わりますね。
以上のように、カタカタバージョンや漢字を使ったバージョンがヒストリカルなものですが、後々「たこのうた」と平仮名での記載も増えました。あなたはどの表記で憶えていますか?
3番が消えた!?
のちの教科書では3番が消されてしまったようで、3番の歌詞を知らない方も多いらしいです(私がアンケートをとったわけではないですが、それって本当?)。
3番をご存じなかった方は、是非これを機に覚えられると良いかと思います。ということで再掲します。
アレアレサガル。
ヒケヒケイトヲ。
アレアレアガル。
ハナスナイトヲ。
1番や2番と違い、ドラマ性のある様子ですね。私もかつて、凧が下がったところでちょっと残念な気持ちになったものです。凧が上がると「わー上がったー!」と興奮しました。
母音で始まる言葉の歌い方
「たこのうた」には、母音で始まる言葉が多く存在します。
まず、”あがれ” という言葉が多いですね。そして、”うけて” 、”いとを” 、”あれあれ”、”あがる” もあります。これらを無頓着に歌うと、日本語の輪郭がぼやけてしまいます。
少し言い直す
語頭の母音は、日本語の自然な流れを保ちながらも、少し言い直す感覚で発音すると良いでしょう。語頭の母音はその前の言葉の音と繋げて歌いがちになり、必要以上に前後の単語の結びつきが強くなりがちです。
同じ母音が続く箇所は要注意
“たこたこあがれ” では、”こ” の次に “あ” がきます。ローマ字にすると、ko の次に a 。つまり異なる母音なので、仮に無頓着に歌っても、まだ大事には至りません。
しかし、”かぜよくうけて” では、ku の次に u がきます。つまり同じ母音が続きます。これを分けずに歌うと、”かぜよくーけて” となります。つまり、”うけて” がその前の単語に食われてしまうのです。
もし “きのうえを” という歌詞があったら、歌い方で意味がガラッと変わります。”木の上を”、”昨日絵を”、”木上(大分市内の地名)を” のそれぞれで歌い方を変えなければなりません。
文脈から分かるでしょうって?
仮に発音に無頓着でも、文脈で理解できることもあります。会話のような速いコミュニケーションでは、たしかに発音が雑でも、文脈や状況から理解できることも少なくありません。
しかし朗読やアナウンスでは必ず発音を意識します。なぜなら、可能な限り正確かつ明確に聴き手に伝達するためです。
ことに歌ともなれば、一つひとつの発音が音符によって引き伸ばされますし、文脈も掴みづらくなります。さらに各単語の持つ熱量や、子音や母音の持つアート性も、話す時より遥かに大きい。だから、発音に対しての細かい配慮が欠かせないのです。
「たこのうた」は短くてシンプルな唱歌ですが、一度細かいところまで意識して歌ってみてください。存外、簡単にはいかないことを体感できるかと思います。


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