お待ちしておりました!
庭先に目をやると、新しい緑の中に黄色いお星さまが輝いています。そう、たんぽぽです。鮮やかな黄色で、今年もこれからどんどん気温が上がるのだなあとしみじみ思います。
さて、今回は童謡「蒲公英」について。難しい漢字ですが、これで たんぽぽ と読みます。まずは私が歌ったものを掲載します。
男の私が歌うとあまり美しくないかもしれませんが、作品自体は美しいなあと感じます。そして、ようやく冷たい風も吹かなくなって、あったかい風に吹かれて気持ち良くなる感じがしますね。
では、早速「蒲公英」について掘り下げましょう!
『新作童謠』第13集
童謡「蒲公英」は、作曲者の本居長世が1921(大正10)年〜1923(大正12)年に著した『新作童謠』の第13集にて初めてこの世に出ました。
ちなみにこの童謡集は、現代でもお馴染みの音楽之友社から発売されていましたが、発行は敬文館だったようです。のちに改訂版も出ています。
歌詞と改変について
早速歌詞をご紹介します。実は、あらゆる動画や楽譜を見ると、『新作童謠』に載っていた歌詞とは微妙に違った歌詞になっていたりするため、その点についても触れたいと思います。
歌詞
たんぽゝたんぽゝ田甫のたんぽゝ
澤山の蒲公英
ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ蒲公英
あたかい風がソヨソヨソヨ
蜜蜂小蜂がブンブンブンたんぽゝたんぽゝ田甫のたんぽゝ
澤山の蒲公英
ぽつ ぽつ ぽつ ぽつ蒲公英
可愛いてふてふがヒラヒラヒラ
まひるのお日さまキラキラキラ
本来、仮名2文字の繰り返しには “く” を伸ばしたような記号が用いられていますが、上記ではそれを用いずそのまま仮名で表記しました。
なお、上記を読みやすくすると下記のとおりです。
たんぽぽたんぽぽ たんぼのたんぽぽ
たくさんのたんぽぽ
ぽっ ぽっ ぽっ ぽっ たんぽぽ
あたかい風が ソヨソヨソヨソヨ
蜜蜂小蜂が ブンブンブンたんぽぽたんぽぽ たんぼのたんぽぽ
たくさんのたんぽぽ
ぽっ ぽっ ぽっ ぽっ たんぽぽ
可愛いちょうちょうが ヒラヒラヒラ
まひるのお日さま キラキラキラ
こうするとだいぶ印象が変わりますね。
よく見られる校訂や改変
先ほども書いたように、あらゆる動画や楽譜を見ると、歌詞が微妙に違っています。よくあるものをご紹介します。
あたかい → あったかい
元の歌詞では “あたかい” というように促音便(っ)が表記されていませんが、”あったかい” と書くのが一般的なので、のちの楽譜の校訂のどこかのタイミングで “あったかい” となったのだと思います。
たとえ元の歌詞の表記でも、実際に歌うときは “あったかい” で差し支えないでしょうが、”あたかい” と歌うと原曲に忠実です。
風が → 風
“風が” を “風” と表記してある歌詞をネット上で見つけました。”が” があるのと無いのとで意味はほぼ変わりません。
ただ、この改変には何か根拠があるのでしょうか?作詞者はこの改変を認めていたのでしょうか?そのあたりの答えが分からない限り、何とも言えません。
ちょうちょうが → ちょうちょ(う)
ほかの歌い手さんたちが動画で歌っているのを聴くと、”ちょうちょ” となっていたりします。また、楽譜もまずそうなっています(私が確認した限りでは)。
これは先ほどの “風” ほどの不自然さはありません。むしろ “ちょうちょうが” と歌うほうが、符割り的に不自然にさえ感じます。が、あくまでも原曲では “ちょうちょうが” です。
こういう小さな改変は、童謡等においては度々見られます。言葉は生き物であり、しかも現世まで歌い継がれる中で少しずつ変わっていくのは十分あり得ることです。真相を知り得ない面もありますが、常に疑問を抱きながら作品と向き合うことを忘れないでいたいものですね。
【おまけ】かあい?かあいい?かわいい?
『新作童謠』の楽譜を目を凝らして見てみるのですが、実はネット上にあるスキャン楽譜しか確認できず、文字がボヤけています。ただでさえ見づらい印字の楽譜なので、余計に分からん…!
歌詞の “可愛い” をよ〜く見てみると、”愛” にルビが “あ” と振ってあるように見えました。なんともボヤけて自信がありませんが、もしそれだと”かあい” と歌うことになります。
一方、楽譜上では、 “かあいい” と音に当てているように見えました。あら、”い” がひとつ多くなっているではありませんか。”かあい” なのか “かあいい” なのかハッキリしてくれ!と思いました。
ただ、”あ” については、私の視認違いの可能性もあります。『新作童謠』第13集の実物をお持ちの方はどうかご指摘くださいませ。
もし本当に “かあい” や “かあいい” だとすれば、これはおかしな言葉です。〈かわいい〉は元来〈かはゆし〉であり、さらには〈かほはゆし(顔映ゆし)〉だったといわれています。〈かあいい〉という言葉にはなりえません。
でも芸術では、わざと言葉をいじることがあります。いやだからこそ芸術なのです。文法等に厳密であるとは限りません。野口雨情が作詞し、作曲は今回と同じ本居長世である「七つの子」(烏なぜ啼くの…) には、 “かわい” が出てきます。
なお、冒頭の「蒲公英」の動画では、先述した実情があるため、現代語の “かわいい” で発音して歌っています。真相が分かれば録り直しをしたいと思います。
一本道のある発声を目指そう
ここで歌唱法のお話に移ります。
実際に歌ったのを録音して聴いてみると分かりますが、この歌、けっこう音がブレやすいです(音程がとりにくいと言い換えても良いでしょう)。
というのも、破裂音である “ぽ” が多く、しかも “ぽっぽっぽっぽっ” と促音付きで連続しているからです。簡単にいうと、瞬間的な発音で音を決める必要があり、まるで的(まと)の中心を狙う感覚が必要です。それを4回もやることは至難の業です。
しかし、1個1個を個別に狙わずに、一本道の中で処理をするとずいぶん楽になります。というか、音が安定しやすくなります。
…どういうことか説明しますね!
まず子音と促音を取っ払います。すると “おーおーおーおー” となります。一度それで歌ってみてください。声が一本道になりましたね。この感覚を覚えましょう。
次に子音を復活させて “ぽーぽーぽーぽー” と歌います。子音がなかったときと同じように、一本道で歌うことを意識してください。
最後に、促音を復活させて “ぽっぽっぽっぽっ” と歌いますが、心の中では “ぽーぽーぽーぽー” と歌ってください。そして可能なら、 “ぽ” では少しだけ遠くへはじくようにすると良いでしょう。
以上が、一本道の中で “ぽっぽっぽっぽっ” を処理するということです。これをマスターすると、音がブレにくくなります。是非練習を重ねてみてくださいね!


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