千曲川(山口洋子、猪俣公章)水の流れに花びらを…

歌謡曲・演歌

お待ちしておりました!

今回取り上げるのは、五木ひろしさんの演歌「千曲川」です。長野県を舞台にした歌ですね。

まずは私の歌をお届けします!

私が歌ったものはややテンポがゆったりしていますが、実に風情のある歌詞ですよね。1975(昭和50)年の発表作品ということで、まあまあ年季のある歌です。

今回はこの「千曲川」について、好き勝手解説をしていきたいと思います。

千曲川と信濃川

タイトルにもなった千曲川(ちくまがわ)は、長野県を流れる川とされています。

しかし千曲川の正体は、実は信濃川(しなのがわ)。信濃川といえば、利根川と石狩川と並ぶ日本三大河川のひとつです。千曲川部分を合わせて全長367kmにも及びます。

千曲川は血の川だった!?

では千曲川という呼称は何かというと、信濃川の長野県内での名称です。一般的に、長野県では千曲川と呼び、新潟県では信濃川と呼ぶようです。なぜ長野県では千曲川と呼ぶのか?は諸説あり、中でも血でできたというのが目を引きます。

長野県川上村の伝説で、神々の戦いによって発生した血潮が川を成したというものがあります。一面隈なくただ染まっていたので、血隈川(ちくまがわ)と呼ばれるようになったとのこと。

……ま、あくまで伝説ですけどね!

ほかにも、川が千の数ほど曲がっているといった説もあったりするので、興味がある方は調べてみてください♪

なお、信濃は長野県を意味します。なのに長野県では信濃川と呼ばず千曲川と呼ぶので、少しややこしいですね。

現地を見ずに創られた歌

私は、「実体験をせずとも、想像力でもって、あたかも体験したかのように歌うことは可能」という考えを持っています。賛否両論あるかもしれませんが、歌い手も役者ですから、実体験していないから歌えない!と切り捨てることはしたくない。

それに似た話ですが、今回の「千曲川」を書いた山口洋子さんも、実は現地を見ることなく、千曲川の情景を歌詞に書いたそうです。しかも〈あえて〉赴かなかった。想像の世界で描きたかったのでしょう。

想像の世界だからこその良さ

「千曲川」を歌った五木ひろしさんも、長野県出身ではない。長野県でのエピソードも、コンサート関係以外には聞いたことがない気がします。

なのに!です。「千曲川」は大ヒットしました。

歌で描かれている恋愛の実体験があったかどうかはさておきとして、実物を知らずとも、想像の世界で歌を創りあげることは可能です。場合によっては、想像(というより妄想)だからこそいい!ということもある。

「実体験を経なければ本物の歌は歌えない」と度々聞きますが、だからといって人々の心に響くか否かは、また別問題なわけです。

音域が広く、訓練必須!

ここからは音楽的なお話です。

「千曲川」は意外に音域が広く、最低音と最高音との差は、なんと1オクターブと長6度にも及びます。

仮に最低音をド(C)とした場合、その1オクターブ上のドの次に現れるラ(A)の音が最高音となります。

「千曲川」で多く見る楽譜では、最低音がラ(A)で、最高音はそのラの1オクターブ上のラの上のファ♯(F♯)となっています。

低音と高音での私の歌い方

めちゃくちゃ音域が広くて歌うのは不可能!ってほどではありません。

しかし最低音はけっこう低く、私のような高めの男声では、しっかり狙わないと芯のない声になりやすい域です。逆に最高音は、訓練を受けていないと絞めた声になりやすくなる域かと思います。また、それぞれ単体ではうまく出せても、歌の中でフレーズを意識しながら音のシフトをするとなると難度は増します。

私が歌った際は、低音は声が腑抜けにならないよう深みをイメージしてしっかり狙い、高音は感情の昂りを意識しつつも裏声を混ぜて歌いました。

難しさを感じさせない歌を

でも五木さんは、難しい歌でもそれを感じさせません。プロですね。プロは、難しい歌でも簡単そうに(決して安っぽいという意味ではなく、聴き手に「おいらだってこれくらい歌えるよ」と感じさせるように)歌っていきますね。

一瞬時が止まる “信濃の旅路よ”

私が「千曲川」で一番好きな箇所は、各番の最後の部分です。1番と3番は “信濃の旅路よ” で、2番は “すすきの径よ” です。

なぜなら、そこに時が止まる瞬間があるからです。

1番2番3番いずれも、”の” のところで一瞬時が止まるのです。

理屈より聴くのが早いと思いますから、再度私が歌ったものを掲載します!歌詞が流れるので、該当の場所までスキップしてみてください。

時が止まると感じる理由

「時が止まる」と書きましたが、なぜそう聞こえるかというと、まず “の” の音で少し伸びるのと、伴奏もジャラ〜〜ンと伸びるからです。言い換えると、音が停滞するからです。

そこにあえて音楽記号を付けるなら、フェルマータでしょうか。フェルマータとは、黒い点の上もしくは下に弧が付いた記号です。教科書的には「ほど良く伸ばす」という指示内容ですが、元の意味は「停止」「停滞」などです。「停留所」という意味もあります。「そこで音楽が終わる」という指示として捉えることもあります。

とある漫画では、時間の流れを止める技にザ・ワールドというものがありますが、音楽界でいうザ・ワールドこそフェルマータなのです。

ただ今回は、「あえてそこに付けるならフェルマータだよ」っていう話であり、実際はフェルマータを付けるほどではありません。

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