牧人ひつじを(イングランド民謡、津川主一)

儀礼歌・讃美歌

お待ちしておりました!

クリスマスまであと2日!本当にあっという間です。しばらくライトなクリスマスソングのお話をしてきましたが、大詰めということで、本格的なクリスマスソングへとまいります。

今回は「牧人ひつじを」です。

例のごとく動画を掲載します。オルガン伴奏で歌っていますが、編曲の都合上、全4番のうち3番だけ省いています。

クリスマスになるとよく聞く歌ですが、実はキャロル・讃美歌です。つまりキリスト教の人たちが、クリスマスの時期に教会でうたう歌であり、内容も聖書に基づいています。

今回はこの「牧人ひつじを」について掘り下げていきたいと思います。

英語と日本語の歌詞

「牧人ひつじ」は、宗教問わずよく歌われますが、元々は外国の歌です。その外国の歌を日本語に訳して歌詞をつけたものが日本ではよく歌われます。しかし実に多くの方が意味を理解せず歌っていることでしょう。

原曲不定のイングランド民謡

「牧人ひつじを」は、17世紀より前のイングランド民謡の旋律が使われているといわれています。しかし、その旋律が何の歌のものなのかの詳細はないようです。つまり元の元の歌が何なのかはよく分かりません。農村で伝承されてきたのだと思います。

世界では「The First Nowell(Noel)」として

「The First Nowell(Noel)」は、1833年、W.サンディズ(サンズ)という弁護士が編纂・発表しました。いくつかのバージョンの歌詞があるようです。以下、そのうちのひとつを掲載します。 

The first Nowell the angels did say
Was to certain poor shepherds in fields as they lay;
In fields where they lay, keeping their sheep,
On a cold winter’s night that was so deep:
 
★Noel, Noel, Noel, Noel,
Born is the King of Israel.
 
They looked up and saw a star,
Shining in the east, beyond them far:
And to the earth it gave great light,
And so it continued both day and night:
 
★(省略)
 
And by the light of that same star,
Three Wise Men came from country far;
To seek for a King was their intent,
And to follow the star wherever it went:
 
★(省略)
 
This star drew nigh to the north-west;
O’er Bethlehem it took its rest;
And there it did both stop and stay
Right over the place where Jesus lay:
 
★(省略)
 
Then entered in those Wise Men three,
Fell reverently upon their knee,
And offered there in his presence,
Their gold and myrrh and frankincense:
 
★(省略)
 
Then let us all with one accord
Sing praises to our heavenly Lord
That hath made heaven and earth of nought,
And with his blood mankind hath bought:
けっこうボリュームがありますね!以下、私が訳したものを載せてみます。

【日本語訳(訳:弥生歌月)】

はじめのノエル、天使たちは告げた。
野原で横たわる羊飼いたちに。
彼らは羊を見守りつつ野原で横になっていた。
冷たい冬の夜はぐっと深まっていた。
 
★ノエル、ノエル、ノエル、ノエル、
イスラエルの王がお生まれになりました。
 
羊飼いたちが見上げると星が見えた。
東の空、はるか彼方で輝いていた。
偉大なる光が地球に降り注ぎ、
それは昼も夜も続いたのであった。
 
★(省略)
 
その星の光に導かれ、
三人の賢者が遠い国からやって来た。
彼らの目的は王を探し求めること、
そして星の向かうところへついて行くことであった。
 
★(省略)
 
その星は降りて北西へ向かった。
ベツレヘムの上でとまった。
星はそこでじっととどまった。
幼子イエスが横たわる上で光り続けた。
 
★(省略)
 
すると三人の賢者はそこに入り、
敬虔にひざまずいた。
そしてイエスのもとへ捧げた。
自分たちのお金、ミルラ、フランキンセンスを。
 
★(省略)
 
さあ、心をひとつにして、
我らが天なる神に讃え歌おう。
神は無から天と地を創造され、
血をもって人類を贖われたのだ。
 
★(省略)
 

こう全文訳してみると、聖書が反映されていることがよく理解できますね。以下に記す訳詞だと、ここまで詳しい内容にはなっていません。

日本では「牧人ひつじを」として

日本基督教団の牧師であり合唱指揮者であった津川主一という人が訳しました。当該教団の『讃美歌』の103番にあたります。

牧人ひつじを 守れるその宵
たえなるみ歌は 天よりひびきぬ
喜びたたえよ 主イエスは生まれぬ
 
仰げばみ空に きらめく明星
夜昼さやかに 輝きわたれり
喜びたたえよ 主イエスは生まれぬ
 
その星しるべに みたりの博士ら
メシヤを尋ねて はるばる旅しぬ
喜びたたえよ 主イエスは生まれぬ
 
くすしき光の 導くまにまに
博士はまぶねの 主イエスにまみえぬ
喜びたたえよ 主イエスは生まれぬ

【口語訳(訳:弥生歌月)】

羊飼いがひつじを見守るその夜
何とも形容しがたい美しい歌が天より響いた
喜びたたえよ 主イエスは生まれた
 
仰ぐと空にはきらめく明星
夜も昼も明るくすっきりと輝きわたっている
喜びたたえよ 主イエスは生まれた
 
その星を目印に 三人の博士が
メシアを求めてはるばる旅をした
喜びたたえよ 主イエスは生まれた
 
神秘的な光の導くまま
博士は馬槽の主イエスに会い奉った
喜びたたえよ 主イエスは生まれた

 

津川主一さんの訳詞を口語訳してみましたが、訳詞の内容は、先ほどの英語の歌詞がうまくまとめ上げられているなあという印象です。

“生まれぬ” の意味は、生まれない ではなく 生まれた なので注意です。”ぬ” は否定の助動詞ではなく完了の助動詞ですね。

クリスマスツリーの星の秘密

先に結論をいうと、クリスマスツリーのてっぺんに付いている星は、実は「牧人ひつじを」に出てくる星です。

賢者(東方の三賢者、東方の三博士とも。占星学者という解釈もあり)が、イエスの誕生を知らせる星に導かれてベツレヘムに来て、イエスを拝みました。

つまり、キリスト教では非常に意味の深い星なのです。星を付けていないクリスマスツリーもありますが、そういう話を知ると取り付けざるを得なくなりますね。

ただ、実際そんな星があったのか?というと、どうやら、ハレー彗星なのでは?とか、超新星爆発では?とか、木星と土星が再接近して明るいひとつの星に見えたのでは?とかと諸説あり。まあ、いずれにしてもロマンがありますね(宗教的にはよろしくないかもしれませんが)。

これで少しはクリスマスツリーの星への想いが変わったでしょうか。

ちなみにですが、「牧人ひつじを」の “主イエスは生まれぬ” のメロディーって、ホルストの「木星」のクライマックスの中に出てくるメロディーとちょっと似てませんか?(分かった方は鋭い!)

クリスマスは1月5日まで!?

賢者たちが実際にイエスのもとに来たのは、イエスが生まれてしばらくの期間が経ってからだったとする説が有力のようです。それがいわゆる公現祭にあたる日、つまり1月6日。この日こそイエスが人々の前に姿を見せた日とされています。

それに対し、12月25日から1月5日までは降誕節といい、ヨーロッパなどではここでクリスマスのお祝いをし、1月6日にクリスマスツリーを片付ける……という流れのようですね。日本では松の内ももう終わるなあと話しながら年賀状を慌てて返す頃。

風習の違いがまた興味深いですね。

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