きよしこのよる(F.X.グルーバー、由木康)

儀礼歌・讃美歌

お待ちしておりました!

今日はクリスマス☆しばらくクリスマスソングのお話をしてきましたが、今年は今日が最後です。

今年最後のクリスマスソングは「きよしこのよる」!知らない人はいないほど有名な歌ですね。まずは、私がひとりで合唱したものをお聴きください。

神聖な気持ちになる一曲ですね。クリスマスは、この歌のように清らかなのが、雰囲気としては一番好きです。

では気を取り直して、今回は「きよしこのよる」についてズームイン!あまりに有名すぎるので私では力が及びませんでしたが、可能な限り広く、しかしスマートになるよう心がけてまとめました。

原曲は英語ではない!

「きよしこのよる」の英語版は「Silent Night」です。中学校等の英語の授業で知った方も多いと思います。そしてその英語版こそ原曲だと思い込んでいる方もいるかもしれません。

ところが、英語版はあくまで世界的に歌われるメジャーな歌詞であるにすぎず、原曲の歌詞はなんとドイツ語なのです。

ドイツ生まれのほぼ即興ソング

「きよしこのよる」の原曲はドイツ語の「Stille Nacht」で、カタカナでむりやり書くと「シュティレ・ナハト」です。英語版は「Silent Night」ですが、同じゲルマン語族なのでけっこう似てますでしょう?

「Stille Nacht」は計画的に作曲された作品ではなく、ある事件がきっかけで、ほぼ即興で作曲された作品です。

その事件の舞台は、1818年のオーストリアのオーベンドルフにあった聖ニコラウス教会。クリスマスイヴの前日、オルガンが故障してしまい、これでは讃美歌が歌えない!という状況になりました。そこで、J.F.モール(ヨゼフ)が急遽作詞し、F.X.グルーバーにギター伴奏の曲を付けてもらい、クリスマスイヴに初演!という流れになりました。

実は2年くらい前に作詞されていたのでは?という説もありますが、曲づけの猶予期間は脅威の一日以内。これはもうほぼ即興といっても過言ではないでしょう。

きっかけはネズミ?

オルガンさえ故障しなければ、「Stille Nacht」はこの世になかったのかもしれません。

ではなぜオルガンは故障したのでしょうか。

一説にはネズミがかじったことが原因とのことです。しかし、ネズミがかじったくらいでそんな致命的なダメージを受けるものか?と疑問が浮かびますが、どうやら鞴(ふいご)に穴を開けられたようなのです。

鞴は空気をパイプに送るための装置。吹奏楽器でいう人間の呼吸の役割です。パイプの何本かをやられるくらいならまだ別の音でカバーできますが、大元の空気が漏れてはすべての音が出ません。当時は修理も大変だったことと思います。

ただ、このネズミかじり説に確証はありません。あくまで伝説。ほかの説としては、単にオルガンの経年劣化だとか、調律が悪すぎたとか、天候によるものだとか、色々あるようです。

あと、当時のオルガンは、鞴職人(鞴を操作して空気を送る人)が必要だったことでしょう(現代では基本的に電動送風機が空気を送ります)。ひょっとしたら、その人員が急遽不足した可能性もありますよね。

原詞「Stille Nacht」

ではここでドイツ語の歌詞と私の翻訳をご紹介します。

Stille Nacht, heilige Nacht
Alles schläft; einsam wacht
Nur das traute hochheilige Paar.
Holder Knabe im lockigen Haar,
Schlaf in himmlischer Ruh!

Schlaf in himmlischer Ruh!

Stille Nacht, heilige Nacht,
Hirten erst kundgemacht
Durch der Engel Halleluja,
Tönt es laut von fern und nah:
Christ, der Retter ist da!

Christ, der Retter ist da!

Stille Nacht, heilige Nacht,
Gottes Sohn, o wie lacht
Lieb’ aus deinem göttlichen Mund,
Da uns schlägt die rettende Stund’.
Christ, in deiner Geburt!
Christ, in deiner Geburt!
 
 

【日本語訳(訳:弥生歌月)】

静かな夜。聖なる夜。
皆が眠る中、二人だけが目覚めていた。
信義に厚い崇高な夫婦が。
巻き髪の愛らしい男の子よ、
天上の安らぎのうちにお眠りを!

天上の安らぎのうちにお眠りを!

静かな夜。聖なる夜。
羊飼いにはじめに告げられた。
天使のハレルヤによって。
あらゆる所から高らかに声が響いた。
キリスト、救い主は来ませり!

キリスト、救い主は来ませり!

静かな夜。聖なる夜。
神の御子は、ああなんたるほほえみか。
そなたの神聖な口から語られる愛が
我々に救いの時を知らせる。
キリストよ、そなたの誕生のうちに!

キリストよ、そなたの誕生のうちに!

学生時代にも翻訳したことがありますが、その頃は辞書を引くことすら必死で、つぎはぎな訳し方をしていました。我ながら成長したなあと感じます…!
 

英語と日本語の訳詞は本当に訳詞?

ドイツ語の原詞を読むと、改めて「そういう内容だったのか」と気付かされます。

では、世界に流布する英語の訳詞と、いま日本で定着している日本語の訳詞を確認してみましょう。

英語訳詞「Silent Night」

Silent night, holy night,
All is calm, all is bright
Round yon virgin mother and child.
Holy infant, so tender and mild,
Sleep in heavenly peace,
Sleep in heavenly peace.

Silent night, holy night,
Shepherds quake at the sight
Glories stream from heaven afar,
Heavenly hosts sing Alleluia!
Christ the Savior is born,

Christ the Savior is born!

Silent night, holy night,
Son of God, love’s pure light;
Radiant beams from thy holy face
With the dawn of redeeming grace,
Jesus, Lord, at thy birth,
Jesus, Lord, at thy birth.
 

【日本語訳(訳:弥生歌月)】

静かな夜。聖なる夜。
すべてが安らぎにあり、すべてが輝かしい。
処女なる母と子のまわりのすべてが。
聖なる幼な子よ、とても愛らしく穏やかなそなたよ、
天上の平和のうちに眠れ。

天上の平和のうちに眠れ。

静かな夜。聖なる夜。
羊飼いたちはその光景に震える。
遥か天より栄光が降り注ぎ、
天使の群れがハレルヤを歌う光景に!
救い主キリストが生まれた。

救い主キリストが生まれた!

静かな夜。聖なる夜。
神の御子、愛の純光。
御尊顔から差す御光。
贖罪の恩恵の夜明けとともに。
イエスよ、神よ、そなたの誕生にあり。

イエスよ、神よ、そなたの誕生にあり。

細かくは原詞と異なりますが、全体的なニュアンスはなんとなく似ていますね。言語が違えば完全一致の訳詞を作るのはかなりの難度になりますから、そのくらいのズレはよくあることと思います。なお、訳詞者はJ.F.ヤングで、1859年といわれています。原曲の1818年から40年以上経っています。

日本語訳詞「きよしこのよる」

きよしこのよる 星はひかり
すくいのみ子は まぶねの中に(み母の胸に)

ねむりたもう いとやすく(ゆめやすく)

きよしこのよる み告げうけし
まきびとたちは(羊飼いらは) み子のみ前に

ぬかずきぬ かしこみて

きのしこのよる み子の笑みに
めぐみのみ代の あしたのひかり
かがやけり ほがらかに
これは訳詞というより新たな作詞というほうがふさわしいほど、原詞とは内容が大きく異なりますね。

日本での楽譜への初収録は1909(明治42)年の『讃美歌』第2編。英語訳詞からさらに50年後です。そして1954(昭和29)年の日本基督教団『讃美歌』では109番にあたり、現在でも教会で歌い慕われていますね。

ちなみに、日本語歌詞のものにはもうひとつあります。カトリックの聖歌「しずけき」です。

日本語訳詞「しずけき」

静けき真夜中 貧しうまや
神のひとり子は み母の胸に
眠りたもう やすらかに

静けき真夜中 星はひかり
羊飼いたちは うまやに急ぐ

空にひびく 天使の歌

静けき真夜中 光さして
清らにほほえむ 救いのみ子を
たたえ歌え みなともに

日本では一般的には馴染みがないでしょう。でもこんな歌詞もあると知ると、実に奥が深いなあと思いますね。

氷川きよしの『きよしこの夜』

おまけなお話ですが、氷川きよしの限定生産シングルに『きよしこの夜』(KIYOSHI名義)があります。収録曲は、

  • きよしこの夜(作詞&作曲:ЯK、編曲:宮田繁男)
  • キヨシこの夜 ~Angel of mine~(作詞&作曲:SONOMI、編曲:池田賢司)
  • Silent Night 〜きよしこの夜〜(作詞:J.モール、作曲:F.X.グルーバー、編曲:伊戸のりお)
  • きよしこの夜 (オリジナル・カラオケ)

です。

演歌の氷川きよしですが、J-POP として歌うときはKIYOSHI名義だったようです(今はすべて氷川きよし名義)。

というわけで、ご本人の公式YouTubeチャンネルにあったJ-POPの「きよしこの夜」を掲載しましょう。

演歌のイメージが強いので、これはなかなか新鮮な感じがしますね。

そして、同じくKIYOSHIさんの歌う、讃美歌の「Silent Night 〜きよしこの夜〜」も掲載しましょう。1:25から歌が始まります。

まっすぐで明るい声ですね!私もこんな声が出せたらいいなあなんて思います。私の声には翳りがあるので。

今回は「きよしこの夜」についてお話ししてしましたが、歌い馴染みのある歌でも、掘り下げてみると色々な発見があるものです。

日本ではこれで今年のクリスマスは終わりですが、ヨーロッパでは、これからが盛り上がりのクリスマス。歌いたくなったら、まだまだクリスマスソングを歌っても良いと思います!

コメント