雪(作詞者・作曲者共に不詳)雪やこんこ霰やこんこ…

唱歌・童謡

お待ちしておりました!

今日は強烈な寒波が到来し、日本海側を中心に日本各地で雪が降ったりしています。そこでタイムリーな唱歌をということで、「雪」を取り上げたいと思います。

皆さんご存じであろう、この歌です。

1911(明治44)年の『尋常小學唱歌 第二學年用』に掲載された、知名度が非常に高い唱歌です。が、間違えて歌われることが多いことでも有名です。

というわけで、早速解説を進めていきたいと思います!

え、そうだったの!?な話

ゆーぅきーや こーんこん♪
あーられーや こーんこん♪

……と歌っていた方は、しずかに手を挙げてください。

あら、けっこういらっしゃいますね!

実はその歌詞、間違いなんですよ。私が冒頭で歌っていたのが正しい歌詞ですが、お気づきになりましたでしょうか?

◯こんこ(歓迎) ×こんこん(オノマトペ)

雪はどのように降りますか?という質問に対して、

 こんこん

と答える方は多いと思います。実際、雪や雨がしっかり降る様子のオノマトペ(擬音語もしくは擬態語)として、〈こんこん〉という表現があります。瀧廉太郎が作曲した唱歌にも「雪やこんこん」があります(後述)。

しかし、今回の作者不詳の唱歌「雪」においては、

 こんこ

が正しいのです。これはオノマトペではなく、歓迎を表す動詞です。ChatGPTですら “「こんこ」は擬態語で、雪が降り続く様子や、その音を柔らかく親しみを込めて表現しています” と解説をしましたが、今回の唱歌においては誤りです。

〈こんこ〉は、一説には〈来う来う〉ということばに由来するといわれ、意味は〈来い来い〉となりましょう。つまり動詞の命令形です。今回は歓迎のニュアンスとして使っています。ちなみに上では〈こんこん〉はオノマトペと言いましたが、これも動詞の命令形として捉えることができます。

なお、小難しい古語の話をしますと、カ行変格活用の動詞である〈来(く)〉は、

  • 未然形:こ
  • 連用形:き
  • 終止形:く
  • 連体形:くる
  • 已然形:くれ
  • 命令形:こ、こよ

と活用します。命令形は〈来(こ)〉〈来よ〉。その “よ” がウ音便化すれば〈来う〉になり、イ音便化すれば〈来い〉になり、さらに撥音便化すれば〈来ん〉になります(推量の意味を持つ〈来ん〉とは異なる)。

……ややこしくなってしまいましたが、今回の唱歌「雪」では、雪を歓迎すべく “雪やこんこ” と歌っていることを押さえておきましょう!

歌詞

というわけで、唱歌「雪」の歌詞を掲載します。

雪やこんこ霰やこんこ。
降つては降つてはずんずん積る。
山も野原も綿帽子かぶり、
枯木殘らず花が咲く。

雪やこんこ霰やこんこ。
降つても降つてもまだ降りやまぬ。
犬は喜び庭駈けまはり、
猫は火燵で丸くなる。
 

1番と2番の順に注意!

2番の歌詞は特に有名で、犬と猫の対比が印象的ですよね。だからか、2番のほうを1番だと思っている人も少なくないのでは?と思います。

注意しましょう!犬と猫が出てくるのは2番です。1番に動物は出てきません。

また、2番の “降つても降つてもまだ降りやまぬ” の部分は、1番では “降つては降つてはずんずん積る” です。ここも、勝手に入れ替えて歌っている人がいると思います。

そして1番は文学的ですが、2番は親しみやすくコミカルな感じもしますよね。それも2番の知名度を引き上げている要因かもしれません。

花が咲くとは、何の花?

文学的な1番には “枯木殘らず花が咲く” と出てきます。この意味についても要注意です。

枯木がすべて花の咲いた木になる、つまり春がやって来るんだ!というのは違います。じゃあ冬の花?……それはそうなのですが、植物ではありません。もし植物の花だったら、枯木すべてに咲くのはちょっと浮世離れしていますね。

そう、この花とは雪のこと。雪が降りしきると、枯枝に雪が積もります。枝は所々不安定なので、ムラのある積もり方をします。その雪のことを花とたとえているのです。なんとも素敵な表現ですね♪

“花が咲く” の前には “綿帽子かぶり” と出てきますが、これも比喩表現。山も野原も雪がふわふわに積もって真っ白な状態です。

瀧廉太郎作曲の「雪やこんこん」

東くめ作詞、瀧廉太郎作曲の唱歌に「雪やこんこん」とあります。これは今回の「雪」とは別の歌です。お聴きください。

今回の「雪」は瀧廉太郎作曲ではない

今回の唱歌「雪」の作曲者を瀧廉太郎としている解説を見たら、それは明らかに間違いです。きっと曲名だけ見て早とちりしたのでしょう。

いや実は、瀧廉太郎も「雪」という歌を書いています。しかしこちらは合唱曲です。

今回の「雪」が瀧廉太郎作曲と認知してしまう人がいるのは、瀧廉太郎の「雪やこんこん」と「雪」の存在があるからかもしれませんね。よく調べないと混同してしまいます。

「雪やこんこん」について

瀧廉太郎の「雪やこんこん」の解説はまた別記事でしたいと思いますが、こちらは “こんこ” ではなく “こんこん” なのがポイントです。

ピョンコ節を生かして歌おう!

今回の唱歌「雪」のメロディーの特徴は、やはり跳ねるリズムです。私はピョンコ節と呼んでいます。

ピョンコ節とは

私はピョンコ節と呼んでいますと書きましたが、実は、のちの時代に中山晋平が多用したピョンコ節という概念をそのまま借りただけです!

ピョンコ節とは日本特有の跳ねるリズム。ピョンコピョンコとリズムをとります。西洋のリズムである 付点8分音符+16分音符 でもなく、三連符の4分音符+8分音符でもないリズム。着物をまとって鞠つきをするようなリズムであり、楽譜で正確に書き表すことは不可能です。

リズムの歌い分けも明確に

ただし、ピョンコ節だけで済む歌ではありません。

ゆーぅきーやこーんこ あーられーやこーんこ
ふ っ て は ふ っ て は  ずーんず ん つーもる
やーぁまーも の は ら も わーたぼーしか ぶ り

かー れ き の こ ら ず は な がーさくー

上のピンク文字のところは、タッカタッカという跳ねるリズムではなく、タタというリズムです。タッカタッカとタタを明確に区別して歌い分けるとメリハリが生まれます。ただし、オレンジ文字のところはオノマトペであり、明確すぎるとかえってその妙味を損ないます。

普段何気なく口ずさむ歌でも、細かく見ていくことでグッと良くなります。カラオケで歌ったとしても、”なんだ〜子どもの歌かよ〜” と揶揄されず、 “子どもの歌なのに、こんなに良い歌だったっけ!?” と聴き手に思わせることができるかもしれません!

コメント