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2月の歌って、なかなかコレというものがないのですよね。暦ではほぼ春なので冬の歌は合わないし、春の歌で描かれる情景はもっと暖かくなってからのものばかり。この時期は毎年何を歌うべきか悩みます。
でも前回の唱歌「早春賦」と同じく、2月にピッタリな歌があります。童謡の「こぐまの二月」です。
短いですが、絵本を思わせるようなかわいい歌ですよね。熊にとっての2月がギュッと詰まっています。
今回はこの「こぐまの二月」についてのお話ししていきたいと思います。
教育芸術社との関係
私、実はこの歌を最近まで知りませんでした。子どもの頃に習ったことも聞いたこともなく、大人になってからもずっと知る機会がありませんでした。
どうやら、教育芸術社の音楽の教科書に掲載されることが多いようなので、子供の頃にその教科書を使っていなかったのなら、習わなかった可能性は高いといえましょう(それか私の記憶から抜け落ちているか…)。
では、なぜ教育芸術社なのでしょう。
作曲者は教育芸術社の創業者
「こぐまの二月」の作曲者の市川都志春氏は、株式会社教育芸術社の創業者でした。また彼の弟もそう。
教育芸術社とは、音楽の教科書の出版社です。音楽教育に勤しんでいた市川氏が、1948(昭和23)年に立ち上げた会社です。かつては図工の教科書を出版していた時期もあったようです。
そして現在の代表取締役社長の市川かおり氏は、創業者の孫にあたります。
教科書『小学生の音楽2』に掲載
2025(令和7)年2月現在、「こぐまの二月」は、教育芸術社の音楽の教科書『小学生の音楽2』に掲載されています。2なので第2学年用です。
作曲されたのはいつ?
「こぐまの二月」がいつ作曲されたのかは公表されておらず、不明です。
ただ、JASRACのJ-WIDで調べてみたところまだ著作権が生きていました。ということは、少なくとも70年前である1956(昭和31)年以降に書かれた作品だといえそうです。ちなみに、音楽のみならず歌詞も著作権が生きていることを確認しました。
市川氏が1948(昭和23)年に教育芸術社を創業したため、おそらくその当初はまだ存在しなかった曲だと思われます。
このあたりの真実は教育芸術社に聞けば判りそうな気もしますが、作曲年についてそこまでの熱意はないのでやめておきます。
冬の歌?春の歌?
2月は冬か春、どちらでしょうか。この辺は意見が分かれそうですが、冒頭に書いたように、暦としてはほぼ春です(2月4日頃に立春を迎えるため)。
ではここで、歌詞に注目してみます。
歌詞
こぐまの ぷうさんあなから 出たがお山は ふぶきまだ 春 とおい
しかたが なくてくりのみ たべてみどりの 山をゆめみて ねたよ
気候は冬
暦では春ですが、気象学的には2月はまだ冬といわれます。歌詞からも、ふぶきという単語がうかがえますから、相当寒そうですね。また、”春とおい” と言っていることから、明らかに春は到来していないと解釈できます。もちろん、その春とは、気象学的な春のことです。
なぜ秋の季語 “くりのみ” ?
2番で突如出てくる “くりのみ” 。栗は秋の季語です。晩冬の春を待つ歌だというのに、なぜ秋の色をここに持ってきたのでしょうか?
これはひとつの解釈ですが、いわゆる冬眠が関係しているように思います。
熊は一般的に11月下旬から4月頃まで冬眠する生き物です。11月下旬は暦としては冬ですが、気象学的にはぎりぎり秋。つまり栗を季語に持つ季節です。
冬眠中は、いわば熊の[時]が止まったようなもの。残った栗が散らばり、秋の状態のままかもしれませんよね。そこでようやく春かなと起きてみれば、いやいや、春は名のみの風の寒さや。今日も昨日も雪の空!というわけです。
結論:冬の歌 かつ 春の歌
きっと作詞者は冬の歌のつもりで書いたことでしょう。まだ春は遠いらしいですし、熊は冬眠を継続しているので…。熊にとっての春は、桜も散り、緑の山が見られる4月からなのです。
しかし視野を広く持つと、それこそが初春の情景だということもできます。寒くて雪は降るが、新芽がそろそろ出てきて春めいた陽だまりも見られるようになってくる頃。それが2月で、初春の特徴だというわけです。
そう考えると、春の歌として捉えることも間違いではない。熊視点だと冬の歌ですが、俯瞰した解釈では春の歌といえるわけです。
小学校では、そういったところまで考えて授業を展開してほしいなあと、私は思います。
“クマのプーさん” との関係
「こぐまの二月」に出てくる子熊の名前は ぷうさんです。一方、A.A.ミルンが書いた児童小説『クマのプーさん』の主人公もプーさんです。
あら、平仮名と片仮名の違いはあれど、同じ名前だ!
『クマのプーさん』(Winnie-the-Pooh)は1928年に発表されました。そして1960年代から、ディズニーによってアニメ化され、知名度がぐんと上がっていきました。ディズニーでは『くまのプーさん』(Winnie the Pooh)と表記するようです。
「こぐまの二月」は、そのプーさんに影響されて書かれたのか否か…。
残念ながら、調べても関係性は不明でした。
ただ、ディズニー映画『バンビ』に影響されている童謡「子鹿のバンビ」もあるくらいですから、「こぐまの二月」についても、『クマ(くま)のプーさん』に何らかの影響を受けていてもおかしくはないですね。


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