お待ちしておりました!
3月3日は何の日でしょう?
耳の日?そうです。そしてWHO(世界保健機関)の事務局長・テドロス氏の誕生日でもあります。
そして、何と言っても今日は、うれしいひなまつり!桃の節句と呼ばれる日です。おひなさまとか、女の子の日といった呼び方もされますね。みやびな日です。私はランチでお刺身丼を食べました。
というわけで今回は童謡「うれしいひなまつり」。まずは私の歌でご紹介!男ですけど許してくださいね。
声楽の中に日本的な妙味を取り入れて歌い上げてみました。男が歌う「うれしいひなまつり」も、なかなか悪くないでしょう?
では、早速この歌について掘り下げていきたいと思います。
色々間違えられる曲名
まずは曲名からクローズアップしますが、今回の歌は「うれしいひなまつり」です。
その名前を聞いても特に違和感はないかもしれませんが、いざメロディーを口ずさんで曲名を当ててみろと問うても、正確に当てられる人はあまりいないように思います。
よくあるのは「おひなさまのうた」とか「ひなまつりのうた」でしょうか。実際にGoogleでその文字を打ちかけると検索候補に出てきます。また、中には歌詞冒頭の「あかりをつけましょ」と呼ぶ人もいるでしょうし、「楽しいひなまつり」と惜しい人もいるようです。珍しいのだと「雛人形の歌」と呼ぶ人もいるみたいですね。
しかし、正確には「うれしいひなまつり」です。
ここまでいろいろな呼び方をされる歌は、思ったよりそう多くはない気がします。それだけこの歌を知っている人が多い、つまり、ひなまつりが日本の文化としてすっかり浸透していると言えます。
かく言う私も、この歌のタイトルがパッと頭に浮かんでこないことがあります。特に不意に思い出そうとすると、ウ〜ンと…と少し唸る時間が生じたりします。
ひなまつりと桃の節句
「うれしいひなまつり」は、桃の節句をテーマにした童謡です。
桃の節句とは五節句のひとつ。五節句には、桃の節句(3/3)ほか、七草の節句(1/7)、端午の節句(5/5)、笹の節句=七夕(7/7)、菊の節句(9/9)があり、1月を除いてすべて一桁奇数のゾロ目ですね(1/1 は元日のため、代わりに1/7)。
桃の節句は雛の節句とも呼ばれ、女児の幸福を祈る日です。女の子がいる家庭では、3月3日のために雛飾りを座敷等にしつらえます。元々は旧暦の3月3日祝っていましたが、現在では新暦です。ですから今の桃の節句では桃の花はまだ見られません。もっと暖かくならないと咲きません。
ちなみに、私には妹がいるので、昔は毎年飾りましたね。雛飾りの前で食卓を囲んだことが懐かしい。置いておいた雛あられの袋を犬がかっぱらって行ったこともありましたね。それでも人形たちは顔色ひとつ変えずに見守ってくれていました。
歌詞と登場人物、そして悲しいお話
では、ここで「うれしいひなまつり」の歌詞を掲載し、登場人物を見ていくことにしましょう。
歌詞
あかりをつけましょ ぼんぼりに
おはなをあげましょ もものはな
ごにんばやしの ふえたいこ
きょうはたのしい ひなまつりおだいりさまと おひなさま
ふたりならんで すましがお
およめにいらした ねえさまに
よくにた かんじょのしろいかおきんのびょうぶに うつるひを
かすかにゆする はるのかぜ
すこししろざけ めされたか
あかいおかおの うだいじんきものをきかえて おびしめて
きょうはわたしも はれすがた
はるのやよいの このよきひ
なによりうれしい ひなまつり
桃の花
桃の節句なので桃の花を飾るわけですが、先ほどチラッと書いたとおり、桃の節句は元々旧暦の3月3日でした。そのため、現在の3月3日には桃の花は基本的に咲いていません。4月にならないと駄目です。
桃の花には、厄除けや悪魔祓いの効果があるといった言い伝えがあります。中国では、奇数のゾロ目の日には災いが起こるという迷信があって、桃の節句というのはそれが元になっているそうです。
五人囃子
上から3段目の五人囃子は、西洋的にいうと楽器のアンサンブルです。5人なのでクインテットですね(2人だとデュオ、3人だとトリオ、4人だとカルテット)。
雛飾りは帝と妃の結婚式を表しており、五人囃子はそこで演奏している設定です。担当している楽器は、左から 太鼓(たいこ)→ 大鼓(おおつづみ)→ 小鼓(こつづみ)→ 笛(ふえ)→ 謡(うたい)。いずれも雅楽に出てきます。
お内裏様とお雛様
この歌では、お内裏様は男雛、お雛様は女雛のことです。両者合わせて内裏雛といいますが、歌では男雛をお内裏様と呼んでいるため注意が必要です。
そして男雛は帝、女雛は妃です。通常、向かって左に帝、右に妃と並ぶ雛飾りが多いですが、実は京都とかだと逆で、向かって左が妃、右は帝と並びます。
現在の天皇皇后両陛下は、国際標準に従って、左に天皇陛下、右に皇后陛下とお並びになりますが、実は大正天皇の即位の礼からそうなったのであり、それまでは逆だったのです。
今となっては、左にお内裏様、右にお雛様と並ぶ雛人形もれっきとした伝統となっていますが、もし古来の風習に従うなら、左がお雛様、右はお内裏様とすることになります。
三人官女
官女とは、宮廷に仕える女性です。雛飾りでは上から2段目に3人いて、向かって左から加銚子(提子)を持つ官女、中央は島台(主に京都)もしくは杯を載せた三方(主に関東)を持つ官女、そして一番右が長柄銚子を持つ官女という並びが一般的です。
中央の官女は、3人の中で最も年長者ということで、既婚者の風貌(眉毛無し、お歯黒)の人形を座らせることが多いかと思います。
姉様
官女の白い顔に似ているという姉様の正体が気になりますね。もちろんこれは雛飾りではなく、”私” から見た姉です。
しかしその姉は、お嫁に来た女性を指すのか、お嫁に行った実姉を指すのか…。
歌詞に出てくる “いらした” は “いらっしゃった” のことで、来たの尊敬語でもあれば行ったの尊敬語でもあります。私は、お嫁に行った実姉と解釈するのが自然に感じます。
ちなみに、作詞者のサトウハチローより4歳上の色白の姉は、お嫁に行く前に結核で亡くなってしまったそうです。
大臣(随身)
右大臣と左大臣は帝の付き人。ふたりは対になる形で上から4段目に置かれています。向かって左の白い顔が右大臣、右の赤ら顔が左大臣。左大臣のほうが右大臣よりも偉い人です(帝から見て左が上座)。
歌の中には赤いお顔の右大臣が出てきますが、正しくは左大臣を指します。私たちから見て右に左大臣がいるので、作詞者のサトウハチローは右大臣と勘違いしたのかもしれませんね。
三人上戸
歌の中には出てきませんが、大臣の段のひとつ下の段には、怒り上戸、泣き上戸、笑い上戸と呼ばれる仕丁(じちょう)が置かれます。雑用係ですが、彼らのお陰で、宮廷の人々は気持ち良く公務に勤しむことができたと思います。良い環境は良い功績をもたらすはずです。
私:サトウハチローの亡き姉という解釈
そして歌の中には “私” が出てきます。
これは女児と解釈することが多いと思いますが、女児時代を思い出した女性や、雛人形の帝と妃のように結婚の日を迎えた女性と解釈しても面白いかと思います。
いや、もっと深読みするならば、サトウハチローの亡き姉様のことかもしれない。サトウハチローは、歌の中で姉様をお嫁に行かせてあげたのかもしれませんね。金の屏風に映る陽をかすかにゆする春の風は、ハチローのもとに帰ってきた姉様のことなのでしょうかね。
捉え方によって、この歌のイメージがまた変わってきますね。
日本的な歌い方と、効果的な無声音
ここからは音楽的なお話です。
「うれしいひなまつり」を聴いて、ああ西洋的のクラシックソングだと思う人はほぼほぼいないと思います。明らかに日本的な旋律で書かれており、雅楽の音もどこからか聞こえてきそうな雰囲気ですよね。
そこでこの歌では、日本的な歌い方を意識するほうが自然……というか、西洋的に歌うとそれが台無しになってしまいます。
また、日本語の無声音も出てくるので、それを意識することで歌の表現が多様化されます。
まずは日本的な歌い方から説明していきましょう。
日本的な歌い方
冒頭の動画で、私は日本的な歌い方を意識して歌っています。
音が一瞬上に上がるとき。たとえば “あかりをつけ ま↑ しょ” 、”はる の↑ やよいの”、”なによりうれし い↑ ” などでは、上がる音のひとつ前の音からズリ上げて移って、軽く引っ掛けるように処理しています。
また、日本らしさを出す簡単な方法としては、全体的に、低いほうの音は地べたを這いずるように歌い、高いほうは軽く処理するというものです。要は重力に素直に従った歌い方。上記のズリ上げも、重力に従った結果です。
ちょっと極端かもしれませんが、美空ひばりさんの演歌の歌い方を意識すると良いと思います。
無声音
日本語(だけではないですが)には、有声音と無声音があります。子どもの頃に習った平仮名表にそんなものは載っていませんが、日本語の発音はもっともっと多様で、無声音もそのひとつなのです。
無声音とは、母音が脱落して子音だけとなり、声帯が震えない発音です。無声化の規則性はありますが、長くなるのでここでは割愛します。
「うれしいひなまつり」には、下記のとおり無声音がありますので、とりあえず押さえておかれると良いと思います。
ローマ字表記の太字の箇所は、話すときにすべて無声音になります。
…ただし!ややこしいのは、歌では必ずしも無声音になるとは限らない点です。
というのも、歌では、音符によって日本語の発音が引き伸ばされたり、音程が作られたりするからです。また、歌には当然音楽的なイントネーションもあります。
話すときに無声音になるからといって条件反射的に無声音にしてしまうと、音楽性を損なってしまう場合があるわけです。ですから、無声音は諸刃の剣ともいえましょう。
細かなマニュアルはありません。曲調、音程、テンポ、やりたい表現、歌い手の声質など、すべてひっくるめて考えていく必要があります。歌い手各々の感覚や価値観によるところもありますから、一筋縄にはいかないのですよね。
ただ、少なくとも、無声音に長めの音が当てられていたり、前後の音と同じ音高ではない音が当てられていたりしたら、そこは有声音になる確率が高いでしょう。
以上を意識して歌うだけで、あなたの歌もかなり色彩豊かなものになると思います。


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