靴が鳴る(清水かつら、弘田龍太郎)お手つないで…

唱歌・童謡

お待ちしておりました!

もうまもなく2025年度が終わります。春休みを迎えている子どもたちも多く、いつも大人ばかりの街や駅では多くの親子をよく見かけ、微笑ましい気持ちになります。

さて今回は、童謡「靴が鳴る」についてです。まずは私が歌ったものを掲載します。

この歌は私の大好きな歌のひとつ。無邪気で天真爛漫な子どもたちが思い浮かんできます。私も童心に戻りそうです。

というわけで、今回は「靴が鳴る」について詳しく見ていきましょう。

歌詞の内容、幻の歌詞

「靴が鳴る」は、いくいくヴェルサイユの1919(大正8)年、雑誌『少女号』11月号にて発表されました。まずはその時の歌詞から見ていきたいと思います。

歌詞

お手つないで 野道を行けば
みんな可愛い 小鳥になつて
唄をうたへば 靴が鳴る
晴れたみ空に 靴が鳴る

花をつんでは お頭にさせば
みんな可愛い うさぎになつて
はねて踊れば 靴が鳴る
晴れたみ空に 靴が鳴る

“お手” は、そのまま読むと〈おて〉ですが今回はこれで〈おてて〉と読みます。

“可愛い” は、〈かわいい〉と読むことが現代では一般的ですが、今回、詩として読むときは〈かあい〉と発音し、歌としては〈かわい〉と発音します。ちなみに、”からすなぜなくの…” で有名な「七つの子」という童謡でも〈かわい〉が出てきますが、あれは “可愛” と表記しています。

“み空” は、あえて漢字で書くと〈御空〉であり、美空ひばりさんの〈美空〉ではありません。昔カラオケで歌ったとき、歌詞の字幕が “お空” となっていましたが、それは言語道断です。”み” という音だから上品なのです(詳細は後述)。

“お頭” は、これで〈おつむ〉と読みます。頭のことを〈つむり〉ともいいますが、それを略した言い方です。”つんで” という言葉と韻を踏んでいるような感じになっているので、語感がとても良いです。

子ども達の無邪気やお遊び

歌詞の内容としては、何ということはありません。そのまんまです。本記事冒頭の私の動画ではAIに描いてもらったイラストを当てはめていますが、まああんな感じかな?といったところです。

でも、子どもの想像力はあなどれません。どんな平凡なものでも、そこから色々とイメージを膨らませ、独自の世界を創ってしまいます。

私たち大人は、常識や社会通念を気にすることが癖になり、子どものような自由な発想にブレーキをかけてしまっています。するとどんどん想像力は錆びついていき、いずれは頭がカチカチになってしまいます。

日頃から、今回のような童謡を通して豊かな発想を取り戻すように努め、頭を柔軟にしていきたいものですね。

実は軍隊の足音!?

ところで、靴が鳴ることを、なぜわざわざ歌っているのでしょうか。

一説には、戦争・軍隊が関連しているといったものもあります。時代的にもなんとなくしっくりきますし、そういう見方は物珍しさがあって、面白がる人もいるものでしょう。

しかしそれは陰謀論にすぎません。作詞者本人は、”皆さんが足なみそろえてゆく道は明るく、コドモニッポンの空は、いつも靑空です。さあ、お手々つないで進みませう。けふも、仲よくあしたも” と、『日本童謠全集3』の中で語っています。

まあ、何を考えて歌うかは自由ですが、作者の意図に従うならば、純粋な歌として捉えれば良いと思います。

幻の歌詞

実は、昭和に入ってから、1番と2番の間に新たに歌詞が挿入されたことをご存じでしょうか。一応2種類あるようなので両方ご紹介しますが、どちらも楽譜に載っているとは限らないため、知らない方も多いと思います。私もそのひとりでした。

まずひとつめは、1934(昭和9)年のもの。宮下晴子の歌唱で発売したニットーレコードが加えたものらしいです。

草に そよそよ
小風が 吹けば
みんな 可愛い
蝶ちょに なって
丘を 越えれば
靴が鳴る
晴れた み空に
靴が鳴る

そしてもうひとつは、1937(昭和12)年に、原詩の作者であった清水かつらが次の歌詞を加え、コロムビアレコードから児童合唱で発売されています。

草のそよ風
足なみ かるく
みんな
  可愛い 蝶ちょになつて
丘を越えれば  
  靴が鳴る
晴れたみ空に  
  靴が鳴る

先ほどの少し似ていますね。

以上の歌詞はあまり知られることなく忘れられていきましたが、いかにも春らしくて良い内容だなあと思います。それにこの歌には、小鳥と蝶々とうさぎと3つ登場することになり、ずいぶんと華やかな印象になります。

文部省による改作(改悪?)

1947(昭和22)年に文部省が出した『二ねんせいのおんがく』では、原詩の1番と2番の歌詞が用いられました。しかし、文部省が改作をほどこしたことで、”み空” が “お空” となってしまいました。

作曲者の弘田龍太郎は認めたそうですが、私が思うに、”お空” だと、やや開いた平凡な響きになってしまいます。しかし幸いなことに、結局世の中のレコードでは “み空” が主流だったため、”み空” のほうが定着率は高かったようです。

また、文部省が改作したのはそれだけではありません。”行(ゆ)けば” を “いけば” としたり、”可愛い” を “かわいい” としたりといった改作もし、原詩の妙味を削ってしまいました。国語教育との整合性をとるためには仕方のない面もあったのでしょうが、それとは別レイヤーとして教えれば済むことだと思います。

歌うときの注意点

シンプルで歌いやすい歌ですが、細かいことを言うと、注意すべき点がいくつかあります。以下に示しますので、ぜひ参考になさってみてください。

4拍目の休符を守る

楽譜をよく見てみると、各フレーズ(ひとやま)の終わりの音の後は休符になっています。

まあそれは良いとして、それより重要なのは、”おててつないで” の時点ですでに4拍目に休符があることです。つまり “おてて ウン つないで ウン” といった取り方になるというわけです。そのため、”おててーつないでー” と間延びして歌わないよう注意が必要です。

“みんな” のリズムに注意

あるあるな間違いとして挙げられるのは、”みんな” を “みーんな” と歌ってしまうというものです。楽譜を見ると “ん” には2つの八分音符が割り当てられていますから、”みーんな” と歌うのが正解です。

“可愛い” は “かーわぁい”

もうひとつ、あるあるな間違いとして挙げられるのが、”可愛い” のところを、”かーわいい” と歌ってしまうというもの。先述のとおり、これは〈かわい〉ですから、”かーわぁい” と歌うのが正解です。オリジナルに基づいた楽譜を見れば一目瞭然。楽譜をきちんと読むことは大切なことです。

“お空” ではなく “み空”

先ほどと話がかぶりますが、楽譜によっては、”み空” が “お空” と表記されています。その楽譜を用いるなら “お空” と歌わざるを得ないですが、できれば “み空” と書いてある楽譜を用いたいものです。この “お” と “み” の違いだけで、この歌の印象はガラッと変わります。

カラオケでの字幕が “お空” となっていたときは、私は思わず大きな声で “み空” と歌い、〈みそら〉が本当なんだと言わんばかりのアピールを友達にしてしまいましたね。

ちなみに、〈御言葉〉という言葉がありますけれども、これにも〈おことば〉と〈みことば〉といった2種類の読みがあります。キリスト教のシナリオの中では〈みことば〉と読むことが多いです。〈みそら〉は、それと全く同じと使い方というわけではないものの、格調高い表現である点は共通しています。

2番は語感の良さを意識して

2番のうさぎの歌詞は、実に語感が良いと私は感じます。”つんでは” の直後の”おつむ”。”はねて” ときての次段での “はれた”。これらが本当に良い響きだと思います。

〈つん〉と〈つむ〉。〈はれた〉と〈はねて〉。この似た響きを意識して歌うだけでも、曲がピシッと締まるような気がします。聴き手に対して歌うときは、ぜひ気持ち良く聴かせて歌い終わりたいものですね。


というわけで、「靴が鳴る」のお話でした。

いやはや、いつになってもこの歌は良いですねぇ。最近は知らない人も増えているような気がしますが、散歩しながら歌うと気分が良くなります。実は今日、犬の散歩をしながら口ずさんでいました。畑とかにいた人に聞かれたかな……。

コメント