お待ちしておりました!
私のYouTubeチャンネルで、安定して人気のある歌があります。
それは、唱歌「故郷を離るる歌」です。
何はともあれ、まずはお聴きください!
これは私がYouTubeを始めてからまだ年が浅い頃に収録したものです。
当時としては精一杯歌ったつもりですが、今になって聴くと、どこかぎこちない。声もあまりハリがなくて、ステージで歌ってもパッとしないことでしょう。
しかし、なぜか割と人気があるのです。
なぜ人気が出たか?
きっと多くの視聴者は、歌のうまさを求めているわけではないのでしょう。むしろ、どこかぎこちない不安定な感じが、かえって歌詞を味わい深いものにしているのかもしれません。
と言うとなんだか自画自賛みたいですが、いや、これは “偶然の産物だ” ということが私は言いたいのです。
朗読劇『月光の夏』での思い入れ
この歌については、私にとって少し特別な思い入れもあります。
昔、毛利恒之氏が書いた『月光の夏』という朗読劇に特攻隊員役で参加したことがあり、劇中で「故郷を離るる歌」を歌いました。特攻のため故郷を離れる日の前夜(だったっけ?)に、声高らかに無伴奏で歌うシーンでした。
そんなエピソードを背景に、動画の収録時にも哀惜と郷愁の思いで歌った記憶があります。
歌と戦争は無関係?
ただ、この歌は、戦争に行くときの心境を描いているとは限りません。そもそも1913(大正2)年の歌なので、歴史的にももっと古いです。そして音楽に至っては、もっと古いドイツ民謡「Der letzte Abend」のものです。
必ずしも史実に忠実でなくても良い
とはいえ、歌は必ずしも史実に正確に歌わなければならないものではありません。といいますか、作曲者や作詞者の思いは尊重すべきですが、その先にある解釈や想像というものは自由であって良いと思うのです。素材の味は生かしながら、自分なりに調理をしようということです。
もちろんこの歌についても、(歌のスキルはさておきとして)私なりに調理して歌ったつもりです。その結果、なんだか多くの方に気に入っていただけて、とても嬉しく思います。
思い出を邪魔せず、想起させる
いや、本当は、私の歌がどうというより、視聴者の心の中にある思い出によるところが大きいような気もしています。私の歌は、偶然にも、その思い出を邪魔せず、むしろ想起させる形となったのかもしれませんね。うん、きっとそうだ。そしてそれでいいのだ!
日本語とメロディーのいびつさ
歌への私の想いとは裏腹に、「故郷を離るる歌」は、声楽的にはあまり良い作品だとは思いません。
もちろん、人々の心を打つ作品であること、歴史に残る作品であることは重々承知しています。その上でのお話です。
ことばの抑揚とメロディーの不一致
まず、実際に歌ってみるとわかるかと思いますが、日本語がなんだかガタガタしていませんか?日本語の抑揚とメロディーの抑揚がアンバランスなのです。
難度の高い息継ぎ
しかもこの歌、息継ぎが非常に難しいし、いざ息継ぎなしで歌おうとするとそれもまた大変!さらに、そういう呼吸面に気を取られると、途端に日本語が暗号みたいに聞こえる歌になってしまうし、音程も悪くなる。
ハンディを克服するかのような歌唱
歌においては、ことばの文節や単語、そして品詞の質や語感まで繊細に意識して歌うことが重要です。なのに、作品のほうに問題があると、そのハンディキャップを克服するかのように歌う必要が出てきます。
そういった意味で、「故郷を離るる歌」は良くないし、いざ自然な日本語に聞こえるように工夫しようとすると、スキル的にはけっこう難しい歌といえます。
たとえば、冒頭の、
園の小百合、撫子、垣根の千草
の “垣根の千草” の “の” の歌い方ひとつとっても難しい。”の” でいきなり音が高くなりますが、それを意識せずに歌うと、ただただうるさい “の” になってしまいます。この “の” は助詞であり、特に大きな意味をもちませんから、軽く歌う必要があります。とはいえ、軽く歌ったせいで、声に芯がなくなったり、音の通り道から脱線したりしてもよろしくありません。
という感じで、いろいろ考えて作り上げないといけない歌なのですよね。。
私もまだまだ勉強したりスキルを磨いたりしないといけませんが、そういうことを意識して日々歌っているつもりです。そう、”つもり” です。
少し長くなってしまいましたが、「故郷を離るる歌」に対する私の想いや考えを述べてみました。
小難しい話も書きましたけれど、あくまでそれはきちんと歌いたい場合の話で、ただただひとりで楽しく歌うだけならあまり細かいことは気にしませんね。家では変な替え歌とかも思いつきで歌うので、作者が聴いていたら怒られてしまうかもしれません!
「故郷」の読み方
ちなみに、「故郷を離るる歌」って、全部ひらがなにしたらどう書きますかね?
私が参加した朗読劇では「ふるさとをはなるるうた」と読んでいましたが、「こきょうをはなるるうた」のほうが締まりはあります。でも歌詞の中では「さらばふるさと」と歌うので、いったいどっちで読んだら良いのでしょうね?


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