たきび(巽聖歌、渡辺茂)かきねの垣根の…

唱歌・童謡

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かきねのかきねのまがりかど〜♪ 

日本人なら誰もが知っているといっても過言ではない、童謡「たきび」です。寒い季節になるとつい口ずさみたくなります。

まず、私が歌ったものを載せましょう。1番から3番にかけて、少しずつ歳をとっていく感じで歌いました。

1941(昭和16)年に発表された童謡です。初めて知ったときは意外に新しいなあと思いましたが、いかがですか?勝手に大正くらいの歌かなとイメージしていました。

短い歌ですが、今回はこの「たきび」について掘り下げていきたいと思います。

歌詞を、解像度を上げて見てみよう!

何気ない歌詞でも、解像度を上げて細かく見ていくと、なかなかに面白いかと思います。けっこうドラマチックなんですよ!早速歌詞の全文から見ていきましょう。

歌詞

かきねの垣根のまがりかど
たきびだ焚火だ落葉たき
 あたろうか
 あたろうよ
北風ぴいぷう吹いている 

さざんか山茶花さいた道
たきびだ焚火だ落葉たき
 あたろうか
 あたろうよ
霜やけおててがもうかゆい 

こがらし木枯しさむい道
たきびだ焚火だ落葉たき
 あたろうか
 あたろうよ
相談しながら歩いてく

解釈や所感

【垣根の曲がり角】

垣根のある道に交差点があり、そこを曲がるところでしょうか。高く分厚い垣根だと、曲がった先に何があるか分かりません。そのほうが展開としては劇的なので、歌の中の垣根もたぶん壁のようだと想像します。漫画とかでは、曲がった瞬間に異性の人とぶつかって恋が芽生えるとかありますが、今回はたきびの光景が目に入ってきました。

【焚火】

この歌の主役のことばです。初頭の季語。暖をとるため、木の葉や木屑を燃やします。サツマイモをアルミホイルで包んで焼いたりした人もいると思います。現代では、所定の条件を満たさない焚火については違法となります。詳しく知らない人はやらないのが無難!昔はよく、畑とかでも野焼きをしている人がいましたね。黒い燃えかすが花吹雪のように飛んで、焼き焦げたニオイも漂ってきました。懐かしいなあ。

【あたろうか あたろうよ】

ここは人と人の会話。ただ、直接話法(実際に誰かが発している)か間接話法(誰かの会話を引用している)かは分かりませんし、独り言だってありえます。逆に大人数の可能性も。ただ、ふたりの男女の会話と思うと、火のあたたかさとは違ったあたたかさをも感じます。また、歌では “あーたろうか” というように “あ” を伸ばしているため、あたたかな響きになります。

【ぴいぷう】

この擬音語への音付けは、作曲者が苦労したところだそうです。作曲上、日本語の高低アクセントと音の高低とのバランスが重要です。本来は “ぴいぷう” の “ぴ” が最も高くなるのですが、2番3番も考慮しつつ、”ぷ” を高くして対応したとのこと。何気なく口ずさむ歌にも、そういう素晴らしいこだわりがあるんだなあと改めて思います。また、あたたかい焚火とは対照的。温度差をありありと感じるところ。

【山茶花】

難読漢字のひとつですね。昔、高校の現代文の授業で出題され、当てずっぽうで「なちゃか」と書いたのはヘンな思い出。なんすか「なちゃか」って!正しくは「さざんか」でしょ。古くは、漢字のとおり「さんざか」と読んだらしいですね。山茶花は冬の季語で、晩秋の頃から花を咲かせます。春夏にはチャドクガの毛虫に要注意で、刺されるとめちゃくちゃ痒くなるようです。風で毒針毛が飛んでくることもあるので、不用意に山茶花には近づきたくない。

【霜やけ】

これも冬の季語で、医学的には凍瘡(とうそう) というそうです。軽い凍傷ですね。寒さにさらされて皮膚の血流が悪くなり、腫れて、痒みや痛みが生じる症状を呈します。想像するだけで寒くて冷たそうですね。この一言に冬がぎっしり詰まっています。

【もう】

“霜やけおててがもうかゆい” とありますが、その “もう” にはどんな意味があるのでしょうね。霜やけになればかゆいものですが、あまりにも予想より早くかゆくなってきたのでしょうか。それだけ寒いってことなのかもしれません……いや、もうひとつの捉え方があります。「もういやだ!」の「もう」と同じ「もう」です。こちらだと、寒いことよりかゆいことへの不快感が強まります。捉え方次第で歌い方も変わりますね。

【木枯らし】

木枯らし1号が吹くのは、晩秋〜初冬。秋との別れや冬の到来を感じさせることばですね。これも冬の季語です。木枯らしは冬至の頃まで続きます。木枯らしさえなければ、冬はもう少し過ごしやすくなるんじゃないかと思います。

【歩いてく】

このことばは、間違われて “歩いてる” と歌われることがあります。その誤植の楽譜が出回っているそうなので、そのせいもあると思う。。けしからん。。タイプミスか勘違いか知らんが、出版社の責任は重い。しっかり校正しろよ! “歩いてく” と “歩いてる” とでは全然ニュアンスが違うだろ! “く” だからこそ、焚火に向かっていく様子が浮かんでくるんですよ。ほんとにもう!

すみません、最後、感情的になってしまいました。。

知ってる?作詞者と作曲者

「たきび」の作詞者は巽聖歌という詩人で、作曲者は渡辺茂という音楽教諭です。どちらの方も、そう頻繁には聞かないお名前ですね。しかし実はすごい人たちなんです。

北原白秋の弟子・巽聖歌

巽聖歌という名前はペンネームで、本名は野村七蔵。ペンネームから察するにクリスチャンっぽいですが、はい、クリスチャンです。

「水口(みなくち)」を書いて雑誌『赤い鳥』に入選し、北原白秋がその詩を賞賛。これにて詩人への道を歩むことになりました。北原白秋といえば、「この道」や「からたちの花」などを書いた偉大な詩人です。これを機に、巽は北原に弟子入りしたそうです。

のちに「ごんぎつね」を書いた新美南吉とも会っています。先の長くない新美から未発表作品を託されたそうです。新美南吉は今や有名な作家ですが、新美が有名になったのは、巽の尽力によるところも大きかったようです。

巽は岩手県紫波郡日詰町(現在の紫波町)の出身であることから、亡くなって50年以上経った今、紫波町の名誉町民になっています。

80歳過ぎても教員を務めた渡辺茂

作曲者の渡辺茂は、小学校で長年音楽教師を務めました。校長まで登り詰め、その後は小学校や大学の非常勤講師となり、80歳を過ぎるまで小学校で教鞭をとっていたそうです。巽とは性質の異なる人生ですね。

なぜそんな歳になるまで教鞭をとれたのか。それは、29歳という若さで、NHKに委託されて書いた「たきび」があったからです。この歌は現代でも多くの人が口ずさむほど有名です。2015(平成27)年の全国童謡ランキングでは18位です。作曲された当時も、教科書に採用されるほどでした。

よく知られている作品としては、「たきび」のほか「ふしぎなポケット」があります。この2曲が有名どころですが、インパクトは絶大ですね!

発音の難しさ

「たきび」には難所がいくつかあります。あまり気にする人はいないかもしれませんが、きれいに歌うには欠かせない視点です。

カ行

1番は “かき” で始まり、3番は “こ” で始まります。どちらもカ行で、子音は k 。子どもが、おかあさんより先におばあちゃんやおとうさんと発音できるようになることが多いのは、k の発音の難しさに起因します。

カと発音をするとき、じっくりと発音アクションを観察してみましょう。舌の奥を軟口蓋につけ、勢いよく弾(はじ)いているのがお分かりいただけるかと思います。

歌においては、特に歌い出しでは明瞭に発音する必要がありますが、勢い余って爆発してはいけません。その調整は、カ行やガ行だとけっこう難しいのです。歌うときの大きな課題と言えましょう。

なお、3番の歌い出しの “こがらし” の “が” の子音は、ただの濁音 [g] ではなく鼻濁音 [ŋ] です。これをうまく発音するのは、慣れないと、ただの濁音よりも難しいと思います。練習あるのみですね!

語頭の母音

"あたろうか あたろうよ” は、母音アで始まります。

このアの発音の仕方には大きく2つあって、ひとつは声帯をパチっと軽く打って明瞭に発音する方法。もうひとつは、ハ行を発音するかのごとく流動的に発音する方法です。……って言っても、これはレッスン等で実践してみないと分かりづらいですね。

そのどちらを選ぶかはケースバイケースです。前者は少し息を節約できますが声帯への負荷が大きく、後者はその逆です。それを知ったうえでどっちを使うか?ですね。でも私の経験上、後者のほうが音を定めやすいです。

普段何気なく発音しているアでも、語頭に来ると途端に歌いづらいもの。そのときはハ行のつもりで流動的に発音してみるのも手です。もっとも、本当に “はたろうか はたろうか” と歌ってはいけませんが、プロセスとしてはそれもアリでしょう。

今回は以上です!

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